2020年12月25日(金)

ゴンちゃんが死んじゃった

大好きだった  世界でいちばん好きだった

家族に順位を付けるのは良くないってわかってるけど、それでも誰よりも、いちばん好きだった。自分大好きな私だけど、自分よりもゴンちゃんが好きだったんだ、何よりも大切だった。

2013年12月22日

毎年恒例の親戚の集まりの帰りに父ちゃんとペットショップ。父ちゃんは白と水色の子を指さして「あれは？」端っこで眠ってる大人しそうなインコだった。

小6の私が選んだのは黄色と水色のレインボー、ヒナがいっぱいいるカゴの中で、ひとりだけギャーギャー騒いで他の子の羽をブチブチ抜いてた。ハゲてた。「なにこの子…！」初恋みたいな感覚だった、何この気持ち、一目惚れだな、すぐその子に決めた。もし私がポケモンの主人公で、博士に見せられたのが『リザードン，ミュウツー，ゴンぴ』でも絶対ゴンちゃんを選んだ。

小さい箱に入れられた小さな鳥を、父ちゃんが手で持ちながら自転車で帰った。寒かった。

開封、怖がって出てこない。箱を斜めにしても出てこない、脚力どうなってるんだ、そんな小さいのにさ。

ずっとビクビクしてた、そりゃそうだよな、ヒナはとにかく隙間に潜ろうとするんだ、肘の内側にどうしても突っ込んでくるの、愛おしくて堪らないよこんなの。

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名前どうしようか、どうしようね、まだオスかメスかわかんないしね。

テレビでゆうゆう散歩がやってて、加山雄三が話しかけた柴犬の名前が ”ごんた” だった。

「じゃあ『ゴンぴ』にしよう！！ゴンがカタカナでぴはひらがなね」

なんで？？？？？変な名前。セキセイインコのゴンぴ。やーいゴンぴ！変な名前！

しかも次ちゃんと聞いたら柴犬 ぶんた だった。どういうことだよ。

ゴンちゃん女の子だったし。

小6の私、A4のコピー用紙にうっすい鉛筆で『命名:ゴンぴ』ってでっかく書いてしばらくゴンちゃんのお家の横に貼ってた

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冬休み明けの短縮授業「ごはんあげなきゃだから先帰るね！」って友達置いて小学校から走って帰ったな。こんなことも、ヒナのぐちゃぐちゃなエサのにおいも私の手の中からガツガツばくばく食べる赤ん坊ゴンちゃんも、全部ちゃんと覚えてるんだ、おっきくなったねえ

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ゴンちゃんは私が大っ嫌いだった。ゴンちゃんは母ちゃんが大っ好きだった。ゴンちゃんは私が大っ嫌いだった、なんでよ。ライバルだと思ってたのかな。

私が近づくと毛が逆立って顔が2倍にでかくなって目が吊り上がる、なんでよ……なにもしてないじゃん…撫でたいだけなんだけど………無理矢理撫でようとすると爪の横の指の柔らかいとこ狙ってガブガブ噛んでくる、血が出る、穴が空く、泣くほど痛い。撫でようとしてないのに自分から手に飛んできて噛まれたりもした。長袖着てるのに肌狙ってくるの。怖すぎ。ちゅーしようとして唇噛まれてバカでかい口内炎できたこともあるな。ゴンぴ凶暴。でも「見て〜これゴンちゃんに噛まれたの😢」って友達に見せるのも好きだった。

「ゴンちゃ〜〜ん！ゴンちゃんただいま！………怒ってる…」

もうルーティーンだったなこれが。毎回面白かった、笑ってた、何百回やっても飽きなかった。私が撮る写真膨れてダルマみたいなのばっかだったな。

玄関から母ちゃんの声がちょっとでも聞こえるとでっかい声で嬉しそうに呼び鳴きするの。「なんでよー！私がいるじゃん！私じゃダメなの！？……………怒ってる…」ダメでした。

怖い鳥だけどゴンちゃんは寂しがり屋だから、家の鍵開ける音が聞こえると「ピヨヨ！」って、ドア越しに聞こえてくる声がかわいくてかわいくて。「ざんね〜〜〜〜〜ん私でした！母ちゃんじゃありません！ただいまゴンちゃん！………………怒ってる……」ダメでした。ひとりで寂しかったんじゃないの、遊ぼうよ、なんで膨らんでるの………

ゴンちゃんは私以外のみんなに発情してたな。数え切れないほどたまご産んでた。無精卵。ﾎﾟｺﾎﾟｺﾎﾟｺﾎﾟｺﾎﾟｺﾎﾟｺ産んでた。何個産んだかな、50以上は確実にいってた気がする。身体に良くないからいっぱい調べて色々対策してみたけど全然ダメだったな、それなのによく7年も生きたね、すごいなゴンちゃんは

インコの発情見たことある？シャチホコみたいに身体反って目イッちゃってて「ﾌﾟｷｭﾌﾟｷｭ ｷｭﾋﾟ ﾁｬﾝ ギょえ”~~~~~~~~~~~」って言うの、怖いしなかなか気持ち悪くてかわいかった。母ちゃんが普通に話しかけても発情しちゃうから、そんな時は「ひーさん！お願い！」って呼ばれて私が顔見せると  ｽｯ………(´･_･`) って戻るの。なんなんだよ私はよ。

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ゴンちゃんは食いしん坊だった。ペットは飼い主に似るってほんとなんだね。似た者同士仲良くしようよ。ゴンちゃんはニンジンが大好きだった。お箸持つと「ﾝ!?」って首伸ばして、オレンジ色を掴むとすぐ飛んできた。かわいいなあ。ニンジンあげるのが癖になっちゃって、外食しててもニンジンがあると ゴンちゃんにあげなきゃ ってお皿によけようとしちゃうんだよ。

夜布団に入ってる時に「ﾌﾟﾁ…ﾌﾟﾁ…」って暗闇からエサ食べてる音が聞こえるのがかわいくて仕方なくて大好きだった

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ここ半年くらいかな、もっとかな。足が悪くなって上手く掴めなくなって、最近はもう立つことさえ満足にできなかった。父ちゃんと一緒にバリアフリー化したんだ。カゴの入口と中の段差なくして平らにしたり、入口まで滑らない坂作ってあげたり。愛されてるねえ君は。

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『ごん、死んじゃった 』朝出かけてた父ちゃんのメールで知った、母ちゃんと買い物中だったの、「ひとりで死なせちゃったね」ってふたりで少し泣いて、ダメだ今は考えないようにしよって買い物すぐに済ませて帰った。いやでもホントかな、嘘なんじゃない？って思ってた、言わなかったけど。ラジオからエレカシの 俺たちの明日 が流れてて、無心で歌いながら帰った。前がぼやけて見えなくなったら危ないからさ。まだ運転慣れてないし。

あれ、布に包まれてる、長いしっぽが出てる、動かないな、あれ、ほんとだ、嘘じゃなかった

黙って撫でた、撫でさせてくれるんだ、怒らないんだ、噛まないんだ

なんで濡れてるんだろ、聞けなかった。なんで濡れてるの？母ちゃんが聞いた

「水飲むところに落ちてた」

あぁ聞きたくなかったな知りたくなかったな。お水飲んで息引き取ってから落ちちゃったの？もう足がうまく動かなくなってたから、落ちちゃってそこから上がれなかったのかな。溺れたの？苦しかったかな。苦しいな。わかんないな、わかりたくないな。苦しいな。ごめんねゴンちゃん、ごめんね。

ストーブで乾かしてあげた。ほらもう自分で毛繕いちゃんとできないのに触らせてくれないから開いてない羽ばっかじゃんか。こんなに触っても怒らないの？ここ触られるの嫌いだよね。噛まないな。指に穴空かないな。血でないな。かわいいな。世界一かわいいな。大好きだな。でも冷たいな。動かないな。あったかくしたら動きださないかな。急に噛み出したりしないかな。綺麗な色だね、美人さんだ、かわいいね

父ちゃんの実家にふたりで埋めに行った。どうだいゴンちゃん初心者マークの助手席は、怖いでしょ。夕日が綺麗だった、眩し過ぎて痛かった。「ほらゴンさん、ゴンさんの嫌いな太陽だよ！！」日光浴させるとブチ切れてたな。でも怒りながら水浴び楽しそうにしてたなあ。水浴びするとボロ雑巾みたいになるんだよ。隣で明るく思い出話してくれたけど、へへ って笑うことしかできなかった。案外視界ぼやけてなかったな。頬から首つたって胸が池みたいになっててすごく不快だった。

なかなかお別れできなかった。できることならゴンちゃん抱いて一生そこに座ってたかったな。だってねゴンちゃん知ってる？私お出かけしてる時急に「ゴンちゃんに会いたい…」って泣き出したこと何回もあるし、真剣にゴンちゃんと心中考えたことあるんだよ？？？ゴンちゃん握り潰しながら飛び降りようかなって考えてた、だってだってほんとに一緒に死にたかったんだ〜。

「でも寒いよね、もう行こっか、ゴンちゃん」唯一口に出せた

おじいちゃんちの庭にはさ、私が幼稚園生の頃に一緒に暮らしてたぴーちゃんっていう先輩インコがいるんだよ、ご対面だね。あんまり覚えてないけどぴーちゃんは大人しかった気がするな、仲良くできなさそうだなあ。そういう所も大好きだなあ

偶然居合わせた親戚が「長くいると情が湧くからなあ」って言ったら父ちゃん「なんでもそうだよ。もしかしたら人様よりもそうかもな」って返してて、そうだよそうなのその通りなの何よりも大切なの って思いながら、大きな声出して泣きたいの堪えて静かに泣いた。

車降りて家に着く少し前に「ああすれば良かったこうすれば良かったって考えなくていいんだからね。俺は最後にお水飲めたんだから良かったねって思ってる。生き物ってなんでも最後は水なんだって。ゴンちゃんがお水飲みたいって思ってそこまで行けたんだから」「7年楽しませてくれてありがとう、それだけです俺は」って言われた。何も返せなくて黙って歩いた。

ああなんでこの人は今欲しい言葉を全部くれたんだろう。この人が父親で本当に良かった。

おかしいな、家のどこ探してもいないな。ほんとにいなくなっちゃったんだな。しばらく空っぽの鳥かご見れないな。寂しいなあ。苦しいなあ。辛いなあ。ゴンちゃんに会いたいなあ。

ゴンちゃん、ゴンちゃんは本当に愛されてたよ。いちばん愛してた私が言うんだから間違いない。大嫌いな人に言われても嬉しくないかな。怒ってるかな。ダルマみたいになってるかな。うちにきて幸せだったかな。幸せな一生を過ごせたかな。楽しかった？

私はすっごく楽しかったよ。全部全部覚えてるよ。全部宝物だ。幸せだった。幸せだなあ。ありがとうね。

ゴンちゃん、7年間一緒に生きてくれて本当にありがとう、世界でいちばん大好きだよ、ゆっくり休んでね

またね

またこんどね